新しいボレロに注目しましょう

クラシックCDこの曲ベスト3 File-025

ラヴェル:ボレロ

クラシックにあまり詳しくない方でも
一度は聞いたことのある曲の代表格が
このラヴェルの
「ボレロ」ではないでしょうか。
2種類しか出てこない
わかりやすすぎる旋律、
同じリズムの繰り返し、
最初から最後までのクレッシェンド等、
単純な構成なのですが、
演奏はそれなりに多様です。

エマニュエル・クリヴィヌ指揮
ルクセンブルク・フィル

冒頭から比較的速めのテンポで
演奏されます(ゆったりとした
「ボレロ」がお好きな方には
向いていません)。
極めて優秀な録音であり、
ステレオ効果も抜群です。
楽器の一つ一つの音が聴き取れ、
どこにどの楽器があるか、
目を閉じて聴くと
オーケストラが眼前に
見えてくるようです。

ラ・シャンブルとの
ベートーヴェン交響曲全集や
ドヴォルザーク新世界交響曲が
素晴らしかったクリヴィヌですが、
ルクセンブルク・フィルとの
ラヴェルやドビュッシー、
ムソルグスキーでも
美しく精緻な演奏を
聴かせてくれます。
現在私の好きな指揮者の一人です。

ジョス・ファン・インマゼール指揮
アニマエテルナ

こちらも以前から注目している
指揮者インマゼール。
演奏は時代楽器使用の
手兵アニマエテルナ。
時代楽器だからというだけでなく、
インマゼールの工夫により、
ところどころから
新しい音が聴こえてきます。

指揮者ロトによる
ストラヴィンスキーが登場して以来、
ラヴェルやドビュッシーを
時代楽器演奏することは
驚きでも何でもなくなりましたが、
それでもやはり新鮮味があります。
なお、当盤の聴きどころは
この「ボレロ」以上に
シュヴァリエがピアノを担当している
「左手のためのピアノ協奏曲」に
あります。
こちらの方が衝撃的です。

ブーレーズ指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

クリュイタンスやミュンシュなどの
1960年代の名演奏や
81年のデュトワ盤に代表されるような
煌びやかなドレスで着飾った
フランス的演奏が主流だった中、
1994年に突如現れた当盤の
精緻極まる演奏に、
これぞCD時代の名演と
驚愕したものです。
すでに四半世紀が経過していますが、
その鮮度は未だに保たれたままです。

ただし、上記2枚のような
録音が現れてしまうと
いささか旗色が悪くなるのは
仕方ないところです。
好みの問題もあるのですが、
ベルリン・フィルの音が
厚すぎると感じてしまうのです。

実は10年くらい前までは
このブーレーズ盤とデュトワ盤、
そしてクリュイタンス盤があれば
今後新録音など必要ないと
信じていました。
それがほんのお試し程度の気持ちで
購入したクリヴィヌ盤の素晴らしさに
感動し、慌てた次第です。
クラシック音楽の演奏は
日々進化していたのです。
かつての名演奏は
決しておろそかにしては
いけないことは確かですが、
それと同様に、
新しく生まれてくる演奏にも
目を向けていないと
音楽を十分に楽しむことは
できないのです。
ぜひ新しいボレロに注目しましょう。

(2020.10.11)

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